一 人の造りしもの



 七月の午後。梅雨の晴間。
 少女が道を歩いてゆく。
 吉川操。蠍座のO型。二〇〇四年十一月五日生まれ、十歳。聖麗メモリアル学院初等部の五年生。今は制服は着ていない。一旦帰宅して着替えている。黒い、本当に純粋に黒く艶やかな髪をショートボブにしている。トレードマークは黄色いヘアバンド。
 この辺りは土地柄、いかにも「研究所!」という感じの建物が多い。操は、その中の一つに入っていく。正門のプレートには英語とカタカナで

 Total Science Laboratory
 トータル・サイエンス・ラボ


 とある。名前からして胡散臭い。正門の脇がいきなりゴミ集積所になっているのも怪しさ大爆発である。
 細長い敷地の奥の方にはドーム状の建物や、学校の体育館のようなカマボコ型の建物も見える。が、平行に何本も横たわる細長い研究棟の真ん中を中央連絡通路が貫くというのがこのTSLの基本的な造りだ。上から見ると魚の骨に似ている。
 操は、ちょうど目玉の位置に当たる守衛所に声を掛ける。
「こんにちは」
「はい、こんにちは」
 いかにも人の良さそうな初老の守衛が返事をする。
「理英ちゃんいますか?」
「ちょっと待って。えーと……」
 守衛は傍らのモニターに目をやる。所長、副所長、そして「特別研究員」の三人はその所在が常に把握できるシステムになっているのだ。「特別研究員」の現在位置を示すマークは、画面上で移動している。ゆっくりと。
「ほら」
 守衛が操の方に身を乗り出して、玄関ホールの方を指差した。
 ガラスの玄関扉の向こうに一直線に伸びる魚の背骨――中央連絡通路を、何かがこちらに向かってやってくるのが見える。
 高さが二メートルを超える大きな機械がほとんど音も立てずにしずしずと、するすると走ってくる。このTSLで研究用の機材を運ぶのに日常的に使われている、だが一般にはあまり馴染みがない運搬機械。「リーチ」と通称される、立ち乗り式の電動フォークリフトだ。
 玄関ホールで右に九十度旋回。あくまでも人間サイズを基準に作られている空間で、それでも苦もなくくるりと曲がる。
 運転しているのは、白衣を着た少女。操と同じ年頃に見える。大人が立って運転するように出来ている運転席は少し大き過ぎて運転しづらそうだが、少女は慣れた手つきで操っている。
「理英ちゃん!」
 ガラスの扉を開けて入ってきた操が、リーチに駆け寄る。
「あ、操」
 リーチが止まる。
「今忙しい?」
「うんにゃ。でもちょっと待ってて。荷物降ろしたら、リーチ返してこなきゃ」
「いいよ、別に」
 再び動き出したリーチの後を、スリッパに履き替えた操が追う。
 窓から身を乗り出して二人を見ていた守衛が引っ込んだ。穏やかな笑みを浮かべて。二人を自分の孫と重ね合わせて見ていたのかも知れない。
 仕事柄、守衛は知っている。「特別研究員」を訪ねてくる同年代の友達が一人しかいないことを。
「頼むよ、操ちゃん」
 知らず、呟いていた。
 時に西暦二〇一五年。
 ここは茨城県つくば市・筑波研究学園都市。
 何が起こっても不思議ではない街。


 恐ろしく重そうな黒い金属の塊が、輸送用の木枠にはめ込まれてパレットに乗っている。モーターか、あるいはコンプレッサーか、それとも素人には想像もつかない別の何かなのか。所詮門外漢には分からないことだ。
 そのパレットを乗せたリーチフォークリフトが、廊下を行く。その後を、操が歩いてついてゆく。
 白衣の少女が運んでいるのは、彼女の研究に必要な機械装置の部品である。そう、彼女は科学者なのだ。
 時崎理英。乙女座のAB型。彼女が産声を上げたのは、二〇〇四年九月十日午前十一時五十八分。茨城県南の沿岸地域をごっそり海に沈め茨城県の面積を一割は削り取った「茨城・霞ヶ浦地震」――世界規模で同時多発的に始まった「大変動」の最初の一撃とみられている――と全く同時刻であった。
 ……と書くと何か曰くありげだが、本筋とは全然関係ありません。
 この三月に筑波大学大学院をわずか十歳で卒業した超天災、いや天才少女であり、このTSLの「特別研究員」である。
 やや茶色がかった肩まで届く髪は、バサバサである。キューティクル傷みまくりである(ジンクピリチオンなる謎の物質が入ったシャンプーは使っていないようだ)。櫛を入れたことなんかあるのか? と思わせる惨状である。手には、滑り止め加工を施したゴム引き軍手。ネズミ色のツナギの上に白衣を羽織っている。色気のないことおびただしい。とても十歳の女の子とは思えない出で立ちだ。
 とある扉の前でリーチが止まった。理英が壁のスイッチをいじると、大きなスライドドアが重々しい音を立てて左右に開いてゆく。ドアの向こうが理英の研究室だ。
 リーチがくるりと旋回して部屋に入ってゆく。部屋はやたらと広く、天井もバカ高い。研究室と実験室、それに工作室まで兼ねているせいだ。様々な実験器具や工具で部屋は散らかっている。片隅には溶接用のガスボンベまである。
 天井クレーンを使って荷物を降ろした理英が、再びリーチに飛び乗った。
「これ返してくるから、あっちで待ってて」
 そう言って「あっち」を指差す。
 この研究室がやたらと広いのには、他にも理由がある。理英はこの部屋を真ん中でアコーディオンカーテンで仕切り、片方を研究室、もう片方をプライベートルームとして使っているのだ。つまり、理英はこのTSLに住んでいるのである。「所長」である祖母と「副所長」である母も、同じような造りの自室兼研究室を持っている。
 TSLは、時崎一家の研究の場であると同時に自宅でもあるのだ。まさに、正しいマッドサイエンティスト一家である(笑)。
 操は「あっち」、つまりアコーディオンカーテンの向こうの理英の自室に足を踏み入れた。研究室の床は廊下と同様のリノリウム張りだが、ここは薄手の絨毯が敷いてある。
 子供部屋としては十分すぎる広さだ。否、ここは「子供部屋」などではない。少なくとも女の子のプライベートルームには絶対見えない。ぬいぐるみもレースのカーテンもない。


「分かった! 分かったから、言うからちょっと離れて!」
 両手を突っ張って理英を押し戻すと、呼吸を整え覚悟を決めて、操は重い口を開いた。
「あのね、理英ちゃん、あのね……。誰にも言わないでね」
「なに?」
「私……、ヘンタイなの……」
「……はぁ?」
 発端は、数日前に操のクラスで行われた性教育の授業だった。
 最初はわけが分からなかった。ペニスがヴァギナにソウニュウされ、チツナイにシャセイされたセイシがランシとジュセイしてタイジになる、と説明されても、それはどこか外国の爆弾テロで二十人死んだといったような、自分とは何の関わりもない乾いた言葉の羅列としか感じられなかった。生殖器の断面図を見せられても、自分の体と結び付けて捉えることができなかった。
 「陰茎」が男の子のオチンチンで、「膣」が自分のアソコで、セックスとはつまりオチンチンをアソコに入れることだ、と理解した瞬間、操の中で何かが目覚めた。三年ほど前までは目にする機会がいくらでもあった兄の股間。男の子のオチンチン。それが大きく固くなって自分の中に入ってくるイメージ。裸になって男の子と抱き合っている自分の姿。
 どんな感じなんだろう……。
 夢想した。夢想すると、胸やアソコが熱くなってジンジンしてきた。生まれて初めての感覚だった。指で触ってみた。気持ち良かった。擦ってみた。もっと気持ち良くなった。やめられなくなった。
 操はオナニーを覚えた。オナニーに溺れた。
 昨夜の自分の行為を思い起こす。

「んっ……。はッ……あ……」
 パジャマの胸をはだけ、下着を膝までずり下ろしたあられもない姿。左手で胸の膨らみを、右手で下腹部の可憐な割れ目を擦り、つまみ、弄んでいる。
 まだ発毛の兆しもないつるりとした恥丘の下に、充血してぷくりと膨らんだ可愛い肉芽が淫蜜にまぶされている。更にその下には、わずかに開いてピンクの柔肉を覗かせている幼い媚肉の合わせ目。指先が浅く潜り込むと透明な蜜が汲み出され、秘苑を潤す。くちゅくちゅという秘めやかな音を立てて。
 操は夢想する。男の子の手が、胸のなだらかな膨らみを、柔らかな秘苑を、愛撫する。
「ああん、もっとぉ……」
 未知の快楽の領域をもっと知りたくて、恥ずかしい言葉が口をついて出る。この先に、もっともっと気持ちいいことがある……。操は果てしなく快楽に溺れてゆく。
 男の子が、破瓜の姿勢を取る。脚の間にはオチンチンがあって、ボッキして固くなって、私のアソコに入ってくる……。
 経験を伴わないただの夢想には、限度がある。拙いその想像は、意識のスクリーンに明確な像を結べずにいる。もどかしさが、指の動きを一層激しく過熱させてゆく。
 ぼやけてしまった男の子のイメージ。顔だけが、ハッキリ見えた。
「お兄ちゃん……ッ」
 操は、背をのけ反らせて昇り詰めた。

「昔みたいに、お兄ちゃんと一緒にお風呂に入りたいの。でも、そんなこと恥ずかしくて言えない……」
 俯いてしゃべる。視線が、そろそろぬるくなってきた紅茶のカップの辺りをさまよう。
「私……、ヘンタイなの……」
 操は自虐的な言葉を繰り返した。
「大丈夫。操はヘンタイなんかじゃないよ」
 真剣な口調で理英が言う。操は俯いたまま、彫像のように動かない。
 重い空気を破るように、理英はコーヒーを一口すすり、立ち上がった。
「ちょっと待ってて」
 そう言うと、理英はアコーディオンカーテンと対面する壁のドアを開けて隣室に行った。
 この部屋は理英専用の書庫だ。研究に必要な資料・蔵書が納められた巨大な書架が所狭しと並んでいる。検索用の端末もある。
 検索システムを起動。大分類で「心理学」を選び、「性に関するもの」でカテゴリーを絞り込む。幾つか出てきた候補の中から対象を一冊に決定すると、書架内での位置がディスプレイに表示される。本に付けられたタグで位置が把握できるのだ。書架本体にも、一段を二十分割したブロック単位で位置が電光表示される。
 理英は「本棚」の前に止めてある小型バケット車のステップに足を掛け、バケットに飛び乗った。
 「本棚」と言っても、理英の本棚はそんじょそこらの本棚とは本棚が違う。理英の「本棚」は、高さ四メートル・幅五メートルの可動式書架十台から成る巨大システムである。もちろん上の方の段には手が届かない。大きめの脚立を一本用意しておいてあちらへこちらへと引きずり回してもいいのだが、それでは普通だ。面白くない。
「面白いもの、変なものにこそ存在価値がある。フツーなんて糞食らえ」
 というのが理英の思考様式であり行動原理であり人生哲学であり基本設計なのである。そこで理英は脚立がわりになるものを自作した。研究の合間の気分転換、片手間で。
 モーターで自走する四輪のシャーシの上に、マジックハンド状というか電車のパンタグラフのようなものが乗っていて、その上に定格荷重二百キロ(定員二人)のバケットが付いている。手すり付きのお立ち台、といった風情。選挙の立候補者が辻立ちに使うのにいいかも知れない。車体全長・全幅ともに一・二五メートル、全高一・六メートル、最大高三・五メートル、重量五百二十キロ。
 バケットの中の理英が、家庭用ゲーム機のそれを思わせる形のコントローラーを手に取った。赤いボタンを押すと三極式の充電ソケットが自動で本体から切り離され(理英はこういうギミックが大好きなのだ)、重い音を立てて床に落ちた。モーターの低い駆動音とともに、バケット車がするすると走り出した。
 目的の本は幸い最前列にあったので、書架を動かす必要はなかった。車を止めてバケットを上げる。理英は、タイトルが金文字で入っている分厚いハードカバーの本を掴んでやっこらさと引っ張り出した。
 取って返し、テーブルの上にどかっ! と広げた。飲みさしの二つのカップがかちゃ、と動いた。
 理英は本の内容を読み聞かせ、必要に応じて言葉を補いながら説明した。要約すれば、第二次性徴が始まって思春期になれば性的な事柄、とりわけ異性への関心が強くなるのは自然で正常な事だから心配いらない、という主旨である。だがいかんせん、出てくるコトバやガイネンが操にはムズカシすぎた。仮に理解できたとしても、それは結局は保健体育の教科書に書いてある説明の域を出ないと知るだけである。
 理英は苛立った。理解できない操にではない。理解させることができない自分に。理英の知能は、この本の内容を理解できる。乾いた言葉を、乾いたままに。でもそれは、目の前の、血の通った、生きて、悩んでいる女の子を救う力にはならない。
 いかに傲岸不遜・自信過剰・我田引水・四面楚歌・八面六臂・絶対無敵・元気爆発・熱血最強の理英といえども、こんな通り一遍の説明で操の悩みや不安を取り除けるとは思わない。普段は人を人とも思わない理英だが、操だけは例外だ。親にも言えない恥ずかしい悩みを自分に打ち明けた親友を前に、理英も真剣になった。
 考えろ、理英。お前のIQ千三百(自称)の頭脳は何のためだ!
 ……よし! それでこそお前は時崎理英だ!
 理英は誇らしげな顔で、胸(操より小さい)を叩いて言った。
「あたしにまかせて! いい考えがあるわ」
 理英にとっての「いい考え」は、理英以外の人間にとってはあまりいい考えでないことが多い。
 操は、理英に相談したことをちょっぴり後悔した。


 更に数日後。TSL・理英の研究室。
 携帯電話で呼び出された操は、口あんぐり状態になっていた。
 操の目の前には、でかい棺桶が置かれていた。いや、棺桶に似た機械だ。棺桶と違うのは様々なケーブルやホースが生えていること、そして上面がガラス張りになっていて中が丸見えになっていることだ。
 操を口あんぐり状態にしているのは、その「中身」だった。
 ガラス張りの棺桶の中は、水のような透明な液体で満たされている。横たわっているのは全裸の少年だ。年の頃は十三、四に見える。操がよーく知っている顔だった。知っているどころか、毎日顔を会わせて暮らしている。
 兄の朋輝だった。
「な……なんでお兄ちゃんがここにいるの?」
 今朝元気に家を出たのに事故で変わり果てた姿になって無言の帰宅をした兄と悲しみの対面をする妹、みたいなセリフが出た。
「だーいじょうぶ、それは本物の朋輝くんじゃないわ。朋輝くんのコピーよ」
 いつの間にか操の隣に立っていた理英が言った。
「コピー?」
「そう。いわゆるクローンというやつよ。朋輝くんの体細胞、つまり髪の毛をちょっと失敬してね」
 ちょっとじゃなかったと思うが。
「名付けて『がんばれ吉川君2号』よ!」
「どっかで聞いたような名前でイヤ……」
「じゃあ『朋輝モドキ』なんてどう?」
「………」
「冗談よ。『トモ』でいいんじゃない」
「でも、お兄ちゃんのクローンなんか作ってどうするの?」
「あら、自分が言ったこと忘れたの?」
「えっ?」
「お兄ちゃんと一緒にお風呂に入りたいの、でしょ?」
「え、えええ!?」
 それだけのためにクローン人間を一体造ってしまったのか? こんな神をも畏れぬ所業をやらかしたのか!? 操は、理英の行いに恐怖した。毎度のことだが。
「それじゃ、起動実験始めるわよ」
 理英は棺桶……もとい培養槽のコンソールの前に立つ。そしておもむろに一個のボタンを押した。
「ポチッとな」(←基本)
 中の液体が抜かれ、寝ていた培養槽が完全に直立した位置まで起き上がり、ガラスのフタが開くところまでのプロセスが全自動で行われる。
 トモが目を開けた。瞼を二、三度パチパチさせ、不思議そうな目で辺りを見回す。
「第一拘束具、除去」
 トモの両膝の辺りを後ろから抱き込むようにして押さえていた金属板が動いて、トモの両脚が解放された。
「最終安全装置、解除」
 肩の上から腋の下に回されている左右二本の太いリングがスライドして開いた。支えを失ったトモの上半身が、前のめりにぐらりと傾いだ。自由になった両腕が振り子のようにゆっくりと振れ、それに引っ張られるように肩が前に出る。朋輝のクローンはゆらり、という感じで一歩踏み出した。
 ぺた。
 濡れた足がリノリウム張りの床を踏みしめる間の抜けた音が室内に響いた。
「歩いた!」(声・山口由里子)
 理英の叫びには、なにか芝居掛かったものがあった。自らが作った生命体が記念すべき一歩を踏み出したのだ。科学者冥利に尽きるというものだろう。
 一方、操は―――

 お兄ちゃん、毛が生えてる……。

 ―――違う所を見ていた。
 続いて右足が上がり、もう一歩。踏み出された右足は床をうまく捉えられなかった。
 慌てて理英が駆け寄った。自分より大きな体が倒れかかって来るのを、両足を踏ん張って受け止める。
「やっぱ、直立二足歩行はまだ難しいか」
「歩けないの? そんなに大きいのに」
「体は十四歳でも、おつむはまだ赤ん坊並みなのよ。体の動かし方自体がまだ分かってないし、フィードバックもうまく効いてない。まあ、用があるのは体だけなんだからいいのよ」
「体だけって……。理英ちゃん、それってなんかスゴいセリフだわ……」
「さあて、お姉さんといい所に行こうね★」
 ショタ趣味の変質者の女みたいなセリフを吐きながら、理英が全裸の少年を半ば引きずるようにして歩き出す。途端に、トモがじたばたと暴れ出した。本能で身の危険を察知したらしい。
「だーいじょうぶ、痛くしないから」
 八割方ウソだ。
 トモのおつむは生まれたばかりの赤ん坊同然である。むずかる赤ん坊を言葉で丸め込もうとしても無理というものだ。
「おのれ、産みの親に逆らうとはいい度胸、すなわちグッド度胸!」
 理英は、トモを放り出して研究室の奥へと走った。
「理英ちゃん?」
「そいつ押さえといて!」
 何やら探しているらしい。仕方なく操は一人で必死にトモを押さえ付ける。力の差を考えればトモの方に分がありそうだが、なにしろ立って歩くことが出来ないから這うか転がるしかない。結果として、かなり伯仲した攻防戦になった。
「操、どいて!」
 得物を持った理英が駆け戻ってきた。そのまま、手にしたそれを振りかざしてトモに襲い掛かる。


 この世に生まれ出てわずか五分で失った意識をトモが再び取り戻した時、彼は自分の体が自由に動かないことに気が付いた。
 トモは相変わらず全裸のまま、イスに縛り付けられていた。脚はM字形に大きく開かされて、足首を肘掛けに縛り付けられている。座るというよりは肘掛けの上から跨がっていると表現した方が近い。ずり落ちそうなほど浅く腰掛けて、股間を自ら突き出しているような屈辱的な姿だ。両手首はもちろん後ろで縛られている。
 最初は「お兄ちゃんと一緒にお風呂計画」(略してO計画)を実行に移そうとした理英だったが、ろくに歩くことすら出来ないトモを風呂に入れると転倒及び溺水の危険があると判断し、「男の子の体の観察」路線に切り替えたのであった。
「さあ、オチンチンでもどこでも存分に触りまくるがいい!」
 理英が鹿賀丈史みたいな口調で言った。もがいてもムダと悟ったのか、トモはイスの上でおとなしくしている。
 理英の目の前で兄(偽物だが)のオチンチンをいじくり回すのはものすごーく抵抗があったが、結局は性的好奇心の方が強かった。
 いいよね、本物のお兄ちゃんじゃないんだから……。かなり強引に自分を納得させて、操は可哀想なトモの前に陣取った。小さくうなだれている男根を至近距離からしげしげと観察する。普通の十四歳、ちゅーに★の男の子がこんなことをされたらその一物はとっくに天を衝いてそそり立っているところだが、トモの場合は自分が何をされているのか分かっていない。「恥ずかしい」という意識や感情をまだ持ち合わせていないのである。
 やっぱり、毛が生えてる……。確かに、お父さんには生えてたけど。本物のお兄ちゃんにも生えてるのかなあ?
 操はだらんとしている陰茎をつまんだり握ったり、更には持ち上げてその下にある袋に触ったりしている。さしものトモも、直接刺激を加えられると気持ちいいらしい。怯えたような表情から打って変わって、うっとりとした顔をしている。
 ついにというか、やっとというか、変化が始まった。操は握りしめていた陰茎が急に熱く、固くなってくるのを感じた。びっくりして、思わず手を離した。操の目の前で、それはどくん、どくんと鼓動の一打ちごとに頭をもたげ、長さと太さを増しながら、ぴんと張りつめた固い肉茎へと変貌した。
 すご……い……。
 操にとっては文字通り生唾ものだった。単なる画数の多い漢字でしかなかった「勃起」という言葉が表わす現象を、操は初めて体感を伴って理解した。今にも破裂するのではないか、などと恐れながらこわごわ手を伸ばし、思い切ってぎゅっと握った。熱くて、固かった。伝わってくる鼓動が自分のものとシンクロするような気がした。
 男の子の体の神秘に夢中になっていた操は、その時非常に珍しいものを聞いた。
「あ、あのさあ、操……」
 操は思わず振り返った。理英がこんな曖昧な、照れたような口調でしゃべるのは初めて聞く。常に自信に満ちあふれている、あの理英が。人と話す時にやたらと顔を近付けたがる理英のあのクセは、自信の表れだ。
「なあに?」
「あ、あたしも混ぜてくれる?」
 操は、非常に珍しいものを見た。あの理英が、下を向いてモジモジしているっ! 常に自信に(以下同文)。
 理英は、父の面影を全く覚えていない。理英の父親は、彼女が物心つくはるか前に交通事故で亡くなっている。理英はまだ一歳にもなっていなかった。顔も覚えてなければ、オチンチンも覚えてないのだ(笑)。兄弟もいないから男の子の、それも勃起したオチンチンを間近で見たり触ったりする機会など皆無だった。
 並の大人以上の知能と知識を持っていても、所詮は十歳の子供なのだ。
「いいよ」
 操は快諾した。
 理英ちゃんでも、知らないことがあるんだ……。そう思うと理英のことが急に身近に感じられた。
 理英は操の隣に陣取ると、おそるおそる手を伸ばして怒張に触れた。包皮が剥けてピンク色をした先端が露出している。胴の部分には血管が浮き出て、全体がどくん、どくんと一定のリズムで揺れている。まるで、そこだけが別の生命を持っているようだ。
「すごい……、熱い……」
 理英が呟いた。操が横から手を伸ばして、怒張の先の方を握った。両手で包み込むようにして、そっと前後に動かし始めた。
 トモが掠れた呻きを洩らした。痛かったのかな、と操は手を止めてトモの顔を見上げて、そうではなく、どうやら気持ちがいいらしいと悟った。トモの無垢な瞳が何かを訴えるようにじっと見下ろしている。もっとしてくれ、というトモの要求に答えて、操は少し手の動きを早めた。
 理英も、根元の方を両手で握りしめてしごいている。トモが呻きを洩らす頻度が増え、息遣いも荒くなってきた。操は少し心配になりながら、でも嫌がってないんだから、きっと気持ちいいんだろう、と自分を勇気づける。小さな手で男性器官を刺激しているうち、トモの息遣いが伝染したかのように操の呼吸も弾んできた。
 何かが起ころうとしている。一体どんなことが起こるんだろう……? 二人の少女はそれを知りたい一心で手を動かし続ける。


「ほら、お口でしてあげて」
 操の体を後ろから抱きかかえて起こしながら、理英がせかす。操はトモの前に座ると、既にいきり立っている肉茎をぱっくりと口に含んだ。頭をゆっくりと前後させながら、咥え込んだものを愛おしげにしゃぶり、舐め上げてゆく。
 理英は所在なげに遊んでいるトモの手を取って操の頭に乗せた。そのまま力を込めてトモの股間に向かって押す。肉茎を強引に喉まで押し込まれた操が、むせた。理英が手の動きを何度か繰り返してから離すと、トモは自分で操の頭を股間に引き付ける動作を始めた。
「うぐっ……むっ、ぐっ……うっ」
 怒張が強制的に口に突っ込まれては引き抜かれる。操は苦しげな呻き声を洩らしながら、舌と唇で奉仕を続ける。後ろから操の双乳を揉みしだいていた理英の手が、下へ移動した。一度少女の柔肉を知った指先はスムーズに肉洞の入り口を探り当て、ずぶりと侵入していく。操の肩がぴくりと動いた。指を出し入れし始めても、操は一度目のような拒否反応を示さなかった。
 理英は少し拍子抜けしたような気持ちになり、思いついてもう一本指を入れた。さすがに操が苦しげな表情になる。理英は単純なピストン運動だけでなく、ぐりぐりと回転させたり、中で指を曲げたりといった淫虐の技を覚えた。
 操の泣き顔が見たい一心で。
 トモは理英の指に犯されて身悶えする操の姿に興奮したらしく、短時間で射精した。両手で操の頭をしっかり押さえて肉茎を喉まで突っ込んだまま、恍惚の表情を浮かべて操の口内に白濁液をどくどくと吐き出した。ぶちまけられる熱い体液を、操はこくこくと喉を鳴らしながら飲み下してゆく。飲み切れない精液が、口に咥え込まれたままの肉茎の脇から溢れた。
 樹液を絞り尽くされても一向に固さを失わない肉茎が、白い糸を引きながらぬるりと引き抜かれた。後ろ手に縛られ、涙を滲ませ、口からは白濁の精を滴らせている裸の操。
 可哀想な操。
 可愛い操。
 すがりつき、涙に濡れた目で哀願し、庇護を求める弱い操。
 それは理英の頭を痺れさせ、嗜虐心を激しく刺激してやまない姿だった。
 理英は操の体を絨毯にうつ伏せにし、膝をついて尻を高く上げさせた。
「もっと脚広げてよ。よく見えないよ」
 操は従順に従った。少女の無毛の陰裂が、理英の目の前にさらけ出された。淫蜜でてらてらと輝き、荒々しく押し開かれた媚肉の合わせ目からは内側の鮮やかなピンク色の柔肉がハッキリと見えている。
 見たい。操のココに男の子のオチンチンが入るところを見たい……!!



フェラチオ口内発射中出し顔射胸射バック騎乗位3P女の子同士拘束近親相姦オナニー
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件等とは関係ありません。


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