DLsite.com に何が起こったか?


 「何が起こったか?」というより「何をやらかしたか?」の方がタイトルとしては適切かもね。
 同人作品ダウンロード販売サイト・DLsite.com は、事前の通告もなく明確な審査基準も示さないままある日突然「倫理指針の見直し」を行い、多くの作品を一時販売停止状態にして登録サークルに多大な混乱と迷惑と金銭的損失をもたらしました。その「再審査」も極めて杜撰かつ一方的、なおかつ表面的なものでした。
 DLsite.com は販売開始前に作品の審査を行っています。つまり、いったん販売が開始されたということはDLが問題なしと認めたということであり、その作品を再度審査したりましてや販売停止にするには相応の理由が必要なはずです。
 今回の再審査は12000本を超える全登録作品に及ぶ極めて大規模なものであり、サークルへ莫大な影響を及ぼすものでした。全く予告なしでそんなことをしたらサークルの反発を招くのは分かり切っています。
 なぜ、DLsite.com はそんな馬鹿なマネをしたのか?


倫理指針の見直しにかかるお詫び


 「何年かかっても取り戻す」とか言ってますけど、もう手遅れですから。
 一生懸命頭を下げていますが、なぜ「今回唐突にこれを適用」したのか、その理由が一切説明されていませんね。不自然なまでに全く言及されていません。なにか言及できないワケでもあるんでしょうかね?
 それではこの騒動と、日本中を賑わせた別の「ある騒動」を重ね合わせて時系列に沿って並べてみましょう。


2005年1月25日
株式会社エイシス(DLsite.comの運営会社)が、発行済み株式200株のすべてを20億円でライブドアに譲渡。ライブドアの完全子会社となる。エイシス側からユーザー・サークルへの発表は一切なし。
 
  2月8日
ライブドアが東京証券取引所の時間外取引でニッポン放送株を買い付け、発行済み株式数に対する保有比率がグループ全体で35%に達したと発表。
  2月23日
ニッポン放送が、フジテレビジョンに新しく発行する株式を大量に取得する権利(新株予約権)を与えると発表。
  2月24日
ライブドアが予約権の発行差し止めを求める仮処分を東京地裁に申請。
  3月3日
ニッポン放送の社員が「ニッポン放送社員一同はフジサンケイグループに残るという取締役会の決定に賛同し、ライブドアの経営参画に反対する」との声明を発表。
  3月8日
フジテレビがニッポン放送株の公開買い付け(TOB)で取得目標だった25%を大幅に上回る発行済み株式の36.47%を確保し、TOBが成立したと発表。議決権比率で39.26%と三分の一超を確保。株主総会で経営の重要事項に対して拒否権の発動ができ、ニッポン放送の筆頭株主・ライブドアのニッポン放送に対する経営権を制限することが可能となった。
  3月11日
東京地裁が、ニッポン放送の新株予約権発行計画でライブドアが発行差し止めを求めていた仮処分申請を認める決定。ニッポン放送はこれを不服とし東京地裁に異議申し立て。
3月15日
実写系作品の取扱いをやめたはずのDLsite.comにコスプレサイト(コスプレイヤー写真集のダウンロード販売コーナー)がオープン。リンク先サイトのURLに「livedoor」が。
 
3月16日
「ライブドアがエイシスを買収したらしい」との未確認情報が流れる。
3月16日
ニッポン放送のフジテレビに対する新株予約権発行を差し止めた11日の東京地裁の仮処分決定について、同地裁がニッポン放送の異議を退け、再度差し止めを認可する決定。ニッポン放送は直ちに東京高裁に保全抗告。
3月17日
02:11、DLsite.com 内の「サークル交流掲示板」にライブドアによる買収の噂の真偽を質す書き込み。
20:16、買収の事実を認める回答。通常は非常にレスポンスの早いこの掲示板において異例の遅レスとなったことは、上層部への報告・連絡・打ち合わせに大変な時間をかけて慎重に回答したことを伺わせる結果となった。
(この間に、作品検索ページから二次創作の元ネタ作品のチェックボックスが消された)
夜になって「猟奇・残酷系ジャンルで作品の削除が始まった」との情報が流れる。
 
3月18日
02:50、DLsite.com よりサークルへの「事後承諾メール」が届く。
 
3月19日
15:47、やや詳しい審査基準を示したメールが DLsite.com よりサークルへ届く。
 
3月22日
16:48、「本来、サークル様に事前に十分な説明を行い、期日を設けて行わなければならないところ、事中・事後報告となって」しまったことを詫び、詳細な審査基準を示したメールがサークルへ届く。しかし文中に「この指針が一人歩きしないよう一部抜粋も含め転載禁止とさせていただきます」の文言があり、サークルの失笑を買う。
 
  3月23日
東京高裁が、ニッポン放送のフジテレビに対する新株予約権発行を差し止めた仮処分決定についてライブドアの申請を認めた東京地裁決定を支持、ニッポン放送の抗告を棄却。ニッポン放送は特別抗告せず、過半数(議決権ベース)の株を獲得したライブドアが同放送の経営権を握ることに。
※メールが届いた日時は当サークルについてのものです。他の全ての登録サークルにも同時に送信したかどうかは分かりません。なお、当サークルが受けた具体的な仕打ちについては日記に詳しく書いてあります。 3月24日
ソフトバンクグループの投資会社ソフトバンク・インベストメント(SBI)がニッポン放送が保有するフジ株13.88%(発行済みベース=約35万株)を約5年間借り受けると発表。SBIがフジの筆頭株主に。


 ちょうどライブドアvsニッポン放送・フジテレビ(を含めたメディア全部)の抗争真っ最中だった時期と重なりますね。
 もうお分かりでしょう。
 悪い意味で世間の注目を集めまくってしまい、しかもメディアを敵に回してしまったライブドアのアキレス腱になりそうな部分を切り捨てるためだったのは火を見るより明らかです。
 完全子会社になった以上親会社の意向には従わざるを得ないでしょうが、その親会社があまりにもイメージ悪すぎ。あんな山師の完全子会社なんて、いつ潰れるか判ったもんじゃありませんよ。とてもじゃないが、これまで通りの取引を続けられる相手じゃなくなってしまいました、エイシスは。頭悪いし危機管理が下手糞。商取引において最も大切なものが「信頼」であることが分かってない。舐めた対応されたら、こっちだって舐め返してやりたくなりますよ。

 何より許せないのは、明らかにウソをついていること。サークル掲示板で「今回の措置はライブドアの意向か?」と質問されて「新株主とは関係ない」と答えていますが、こんなあからさまなウソを誰が信じますか? 仮にウソではなかったとしたら、何ら緊急の必要性もないのに取引相手に向かってツバを吐くような真似をしたわけで、ますますもってエイシスは大馬鹿野郎ということになります。
 もう一つ、上に載っけた謝罪文の中に「同人作品を守っていく立場」という言葉がありますが、これもウソですね。エイシスはエイシス自身及び親会社であるライブドアの保身しか考えていません。
 短くまとめるのが難しかったので上の表には入れなかったのですが、「うお、あのサークルの作品がごっそり消されてる!」「俺の作品も消されたー!」「あれが消されたのになんでこれは消されてないんだよ! 基準が分かんねーよ!」という大混乱の中で奇妙な現象が起こっていました。
 ロリろりな作品で溢れ返っているはずの DLsite.com なのに「ロリ」「ろり」で作品検索しても全くヒットしないという怪現象です。このキーワードでヒットする作品がすべて削除されたわけではなくかなりの数が生き残っていたにもかかわらず、です。
 タネを明かせば、作品タイトル及び紹介文の中の「ロリ」「ろり」がそれぞれ「□(しかく)リ」「ろリ(片仮名)」に置き換えられていたのです。もちろんサークルに無断でです。
 他人の作品を勝手に改竄する輩が「同人作品を守っていく立場」とは片腹痛い。

 エイシスが、サークルを「いつでも切り捨てられる金ヅル」としか見ていない以上、こちらとしてもエイシスを「信頼のおける取引相手」と見ることはできません。
 いや、取引しないとは言ってませんよ? 向こうがこちらを踏み台にするのなら、こっちも向こうを踏み台にしてやるだけの話。利用価値があるうちは利用させてもらいますよ。DLsite.com 以外の販売サイトに誘導するための広告塔として。

 販売価格を DLsite.com だけ945円に値上げしたのは、以上のような理由からです。DL以外では735円ですから210円もお得ですよ。お買い物はぜひDL以外で。
 でもなんだかんだ言っても、DLは新作が毎日コンスタントに10〜15本登録される業界最大手ですからね、大きな存在意義はありますよ。カタログとしての存在意義が。DLで新作チェックして「これだ!」と思うものを見つけたら、他のダウンロード販売サイトでも売ってないかチェックする。DLでしか売ってなかったら仕方なくDLで買うか、あるいは「DL以外では販売しないんですか?」と製作サークルをつっついてやる。そんなスタイルがこれから広がるかもしれませんね(笑)。
 DLsite.com でウチの新作を見かけても慌てて買わずに、まずウチのサイトに来てみてください。必ず他の販売サイトでもっと安く売ってるはずですから。


2006.2.21追記:
 上で「いつ潰れるか判ったもんじゃありませんよ」と書きましたが、まさか本当にライブドアがあんな事になるなんてねえ……。ざまあみろというのが正直な感想ですが。ライブドア倒産はもはや秒読みですね。エイシスも一蓮托生で運命をともにするんですかね。青木社長には賢明な判断を期待したい。別につぶれても構わないけどな、こっちは。
 もしエイシスの買収がライブドアお得意の「株式交換」で行われたのだとしたら、エイシス株20億円分とライブドア株20億円分が交換されたわけで、そしてそのライブドア株は今や紙屑同然……。この膨大な含み損に耐えられるだけの経営体力があるんですかね、エイシスには。


2006.4.20追記:
 親会社ビブロスの倒産に伴い「エルフィックス」が閉店することになりました。運営会社のビブロポート自体はまだ倒産はしていないようですが、そもそもビブロポートは「エルフィックス」を運営するためにビブロスが作った会社。そのエルフィックスが閉鎖に追い込まれたんじゃ、倒産したも同然でしょ。会社として機能してないんだから。
 さて、エイシスの親会社ライブドアがUSENと提携するみたいですね。「提携」とは言ってもその実態は吸収・分解でしょうけど。今のライブドアはどんな扱いをされようとも文句を言える立場じゃない。さっさと「ライブドア」の名がこの世から消滅することを望む。胸糞悪い。
 親会社が消滅するエイシスの経営、どうなるんでしょうね。DLsite.com も、エルフィックスのようにある日突然閉店するんでしょうかねえ……。


2007.3.25追記:
 16日、堀江豚に懲役2年6ヶ月の実刑判決。
 22日、宮内に懲役1年8ヶ月の実刑判決。
 23日、法人としてのライブドアに罰金2億8000万円の判決。これを受けて週明けにもフジテレビジョンが総額380億円前後の損害賠償請求訴訟を起こす模様。

 犯罪企業ライブドアへの断罪が進んできましたね。ライブドア現社長の平松氏は控訴しない方針を明らかにしました。人として当たり前の対応ですね。堀江にもこれを見習って潔く刑に服して欲しいところですが……ブタにヒトのような振る舞いを求めてもムダか。
 それにしても、DLsite.com はいつまでこんなものを誇らしげに載せているのだ。



 「ウチは犯罪企業ライブドアに金玉握られて尻尾振ってまーす♪」と全世界に向けて宣言してるようなもんじゃねーか。白痴か? 株全部買い戻して縁切れよ。



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